
鉄を鍛えて火箸にし、それを2本ないしは4本細い糸で吊るして風鈴に仕立てる。これが、火箸風鈴である。世界広しといえども、明珍本舗の技でしか作れない逸品である。もちろん、形だけなら真似できるかもしれない。しかし、空気を震わせながら優しく響く、どこまでも澄んだ音色は唯一無二のものである。その音を偶然にも姫路駅のホームで耳にしたシンゼサイザー奏者の富田勲氏は、その足で明珍氏の工房を訪ねた。デザイナーのイッセイミヤケのパリコレクションではモデルが手に持った。スティービー・ワンダー氏は「東洋の神秘」と褒め称えた。五十二代続く明珍本舗は、四十八代目の明治維新までは歴史に残る名将たちの甲冑を作る甲冑師だった。その後の苦労と有為転変は想像にかたくないが、今の暮らしに寄り添う鉄の技のひとつとして五十二代目が創ったのが火箸風鈴だった。鉄を操る見事な技があってこそ成せることのできた、美事な創出である。 ※詳細はマガジン「守破離」にて特集。
